今月の一皿

季節ごとの味、三種のしゅうまい

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

人形町といえば、江戸の情緒薫る街。ここにある『旬蕾』は、心優しい女将さんが切り盛りするアットホームな店。メニューの中からあれこれと頼んで、女将さんセレクトのお酒と共に味わいたい

人形町といえば、東京では有名な歴史と文化、そしてグルメの街。江戸時代には人形師や伝統工芸職人が多く住んでいたことが名前の由来だ。長い歴史が物語るその街並みは、江戸の風情を今でも感じられる。そんな温かみのある雰囲気が魅力である。

大通りからちょっと中に入ると、前後左右に店が並ぶ。今宵、目指すは『旬蕾しゅんらい』。吊り下げられた杉玉が目印だ。階段をちょこっと上って暖簾をくぐると、奥のほうから「いらっしゃいませー」と女将の中村照葉さんが割烹着で迎えてくれる。個室もあるが、メインはカウンターだ。割烹・おばんざい・小料理がいい感じで混ざったバーでもある。『旬蕾』を気に入っているのは、とにかく肩ひじ張らなくてもいい雰囲気だからだ。1人でも、2人でも。4人ならば個室に入ればいい。季節ごとに入れ替わるメニューには工夫があり、どれにしようか目移りする。

「今月の一皿」に選んだのは、季節で中身が変わる「三種のしゅうまい」。原木椎茸、ひろっこ(秋田湯沢あさつきの新芽)酢漬け、もろみ醤油の3品はどれも特徴があって美味しい。1人一皿食べたくなるので、どうしても蒸籠が積み重なり、飲茶のようになるのがまた楽しい。あて巻は、まさにお酒のアテ。今日は7種類もあったので、薬味巻き、筋子巻き、ナチュラルチーズ巻きをシェアで。赤酢でつくる巻物は、お酒の合間にちょうどいいのである。

左:松岡 萌氏 右:女将 中村照葉氏

お酒といえば、「土壌や環境に配慮するなど、酒造りの姿勢に共感した蔵との取り引きがほとんどです」と、女将さんと二人三脚で店を切り盛りするスタッフの松岡萌さんが教えてくれた。日本酒で常時50本以上、焼酎は30本ほど用意してあるとのこと。この日は趣向を変えてライスウォッカをいただいた。米焼酎の酒粕を再蒸留したものにスパイスを入れたウォッカで、意外にも刺身や唐揚げによく合う。

店名の由来は落語「試し酒」内の都々逸からで、「酒飲みたるもの、旬の食材を愉しみながら粋に飲もう!」の意味が込められているそう。おふたりのおもてなしを受けながら、粋に楽しみたいものである。

旬蕾

季節ごとに訪れて味わいたい「三種のしゅうまい」1,000円(税込)。種類が豊富なあて巻も、その日のお楽しみ。そのほかにも魅力的な料理がメニューにずらりと並ぶ、ワクワクが止まらないお店だ。お問い合わせと予約はメールにて。

住所:東京都中央区日本橋人形町2-24-5

予約:syunraisyunrai@gmail.com

営業時間:16:00~22:00

定休日:土・日、祝日の月曜

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2025年4月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「季節ごとの味、三種のしゅうまい」。