京の名水 古都の味
写真・伊藤信 文・伊藤祐樹(アリカ)
口に含んだ瞬間に華やぐ爽やかな香りとすっきりとした味わい。ロックやソーダ割りで飲めば、吹き抜ける清涼感が夏の火照りを冷ます……。日本初のクラフトジン専門蒸溜所『京都蒸溜所』が造る「季の美」は〝京都らしい〞ジンだ。
京都の酒と聞いて、ジンはイメージしづらいだろう。しかし、インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション2018最高賞をはじめ、数々の権威ある賞を受賞するなど、すでに世界での評価も高い。その繊細で上品な味わいは、まさに京都の水が生み出していた。「季の美」蒸溜の拠点である京都市南区は、豊かな伏流水で知られる京の酒処・伏見のほど近く。
ジンはアルコールと香味成分以外、約5割前後を水が占めるため、使う水が味の良し悪しを決めると言って過言ではない。そこで「季の美」には、伏見の老舗酒蔵『増田德兵衞商店』が地下から汲み上げる仕込水が用いられている。「増田さんの中硬水は、適度なミネラル分で味をまろやかにしてくれるんです」と、マネージャーの佐久間雅志さん。
ところでジンとはヒノキ科の植物・ジュニパーを主軸に様々な素材の香味を楽しむ蒸溜酒で、ジュニパー以外の素材に決まりはない。そのため、何を組み合わせていくかが蒸溜所ごとの個性であり、魅力となる。『京都蒸溜所』では、室町時代から続く宇治最古の茶園を有する『堀井七茗園』の玉露をはじめ、柚子、生姜など、やはり京都の水が育んだ素材を中心に、11種類のボタニカルの香味を抽出・蒸溜した原酒をブレンドして造り上げる。
「ジンに携わることが新たな刺激になると言ってくれる農家さん、ものづくりの伝統が息づく京都ならではの高いクラフツマンシップに感銘を受けた我々。互いが共鳴し合うことで、まったく新しいジンが生まれました」。
昨年6月には京都の中心部にブランドハウス『季の美House』もオープン。築100年超の京町家を改装し、壁紙に京唐紙の老舗『雲母唐長』の文様を用いた店舗では購入のほか、バーで「季の美」の多彩なラインナップが堪能できるようになった。なかでも、「季の美 ハウスジン」はここだけの限定品。
通常の「季の美」と同じ素材を使うが、ブレンド水はこの町家に残っていた井戸から汲み上げた水を使う。ミネラル分の少ない「フラットな」軟水なので、さらに軟らかくやさしい口当たりが楽しめる。
匠の技をリスペクトしながら、受け継がれる伝統に革新をもたらすジン。〝京都らしさ〞が宿る一杯をご賞味あれ。
季の美House
京都市中京区河原町通二条上ル清水町358
電話:075-223-0457
営業時間:12:00 ~ 21:00
定休日:月曜
季の美 ハウスジン(700ml)6,600円(税込)など
※ 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
*掲載情報は2021年7月号掲載時点のものです。
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伊藤祐樹(アリカ)さんが綴るコラム【京の名水 古都の味】。今回は「伝統と革新の精神を宿す京のクラフトジン」。