京都、路地のなじみ
写真・伊藤信 文・水谷桃子(アリカ)
古き町並みのなかにゲストハウスや若者向けのカフェができるなど、時代とともに変貌を遂げつつある京阪七条界隈。
京阪七条駅から七条大橋を西へ渡り真っ直ぐ進むと、七条河原町の交差点にたどり着く。その北東角から延びる細い路地の入り口に、麺を箸あげするイラストがのった小さな看板が。賑やかな交差点から一転、心地よい静けさに包まれる路地の奥に現れるのが『京カレーうどんECHIGOYA』だ。
扉を開けると、スパイスとふわっとやさしい出汁の香り。白壁に素木使いがカフェのようにしゃれた空間で、女性も入りやすい雰囲気だ。
店長は、京都・伏見で鰹節などを扱う1965年創業の乾物店『越後屋』の二代目、伊藤隆之さん。父から受け継いだ乾物店の主と、うどん店の店長という二足のわらじを履いている。金・土曜は夜も開けるが、ふだん昼営業のみなのは、ランチタイム後、本業に戻るから。
「乾物屋として自分の作ったものを味わうお客さんの顔も見たかったし、その前にどんな出汁に仕上がるのか知りたかったんですよね」と話す伊藤さん。そんな思いもあり約15年前、卸し先の南区のうどん店を縁あって継ぎ、自ら出汁を引くことに。さらなる挑戦として2023年、この地で新たな屋号で開店した。
季節限定の名物メニュー「カレー鍋焼きうどん 海老天入」をいただく。熱々の土鍋の蓋をとれば、湯気とともにやってくるスパイスの香り。真ん中にのせられた半熟卵を崩し、とろみのあるカレー出汁と一緒に麺に絡ませる。出汁のやさしい甘みと、後からやってくる程よい辛みが絶妙なバランスだ。辛いのに、どこか懐かしいホッとするまろやかな味。
南丹産の九条ねぎに大原野『上田とうふ』のお揚げ、しめじなどシンプルな具材が、出汁の旨みを引き立てる。麺は香川県産小麦「さぬきの夢」を使い、出汁との絡みやすさを追求した中太麺だ。肉厚の海老天のプリプリ食感も楽しい。
一番の魅力は、こだわりの出汁。工房で削り立ての、風味と旨みが濃いさば節とうるめ節を贅沢に使い、京都の料亭が愛用する上品な味わいの利尻昆布と合わせている。配合は天候や気温によって微調整、伊藤さんの腕が光るところだ。
カレーうどんに留まらず、通常の出汁のうどんやサブメニューも豊富。中でも出汁の素材をダイレクトに感じられるのが「かつお節ごはん」だ。特製のしょう油たれをかけて口に運べば、削り立ての極薄花鰹が口の中で一瞬のうちにとけていく。旨み広がる、まさに口福の時間。
京カレーうどん ECHIGOYA
京都市下京区七条通河原町東入ル材木町460
電話:075-741-6568
営業時間:11:30~15:00(L.O. 14:30) ※金曜、土曜は18:00~21:00(L.O. 20:30)も営業
定休日:不定休
「カレー鍋焼きうどん 海老天入(かつお節ごはんセット)」1,550円(税込)
*掲載情報は2025年3月号掲載時点のものです。
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水谷桃子(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「削り節のプロが生む出汁のやさしい旨みに包まれて」。