京の朝食

純喫茶の和風トーストと
学生街の活気で目覚める

写真・伊藤 信 文・坂本 綾(アリカ)

鴨川に架かる七条大橋の東側、京阪七条駅から徒歩数分という好立地の『喫茶アマゾン』。時計のように毎日規則正しく訪れる常連客と、三十三間堂に智積院、京都国立博物館など近隣の名所を訪れる観光客を迎えて50年が過ぎた。京都を訪れたら必ず立ち寄る商用客など、離れた土地にもなじみ客は多い。

少しくすんだ煉瓦の壁に赤いオーニングがどこか懐かしい外観は、古き佳き純喫茶の佇まいだ。ところがドアを開けると、思いがけないほど明るく爽やかな空気に迎えられる。それは南向きの窓から差し込む陽光のためか、それとも窓の外を元気いっぱいに歩く女子学生のおかげか。何しろここは七条通。京都人にとっては、京都女子大学のお膝元と認知されている町である。

芳醇なコーヒーの香りと闊歩する学生の姿に活力をもらうなら、時刻はやはり朝。そして軽くモーニングではなく、終日オーダー可能な自慢のサンドイッチを選んでみたい。ミックストーストや玉子サンド、エビカツサンドなど人気メニューは数多いが、ぜひ試していただきたいのが「和風トースト」だ。

香ばしくトーストされた食パンの間に、ぷるんと厚い卵焼きと細切りのキュウリ、そして海苔と削り節が挟まれたサンドイッチ。かぶりつけば、ほのかに白だしの香る温かい卵焼きとシャキシャキのキュウリの絶妙な対比、そして口一杯に広がる海苔と鰹節の風味に、なるほど和風と膝を打ちたくなる。はじめガツンと濃く苦く、後を引かないさっぱりとしたコーヒーも目を覚ましてくれる。

「今お客さんが何を求めているかを常に考え、工夫していく。楽しい仕事です」と話すのは、2代目店主の立石裕則さん。「和風トースト」もその創意から生まれた名物の一つだ。新メニューを開発したり、たとえばコーヒーにLサイズを設けてみたりといった日々の工夫の積み重ねが、誰にも歓迎の空気を感じさせる居心地の良さを生み出していく。

全21席と広くはないが、1日に使う食パンは平日でも15本、観光シーズンの週末ともなれば20本以上。開業時から依頼している、地元の小さな製パンメーカーから毎朝届く食パンを、注文の都度包丁でカットする。「混み合う時期は一日中パンを切っていますね」と立石さん。

毎日変わらぬ美味しさにつながる、水分量や口当たりのわずかな違いを大切に、工場でのスライスや作り置きを選ばないのが、京都で半世紀続く喫茶店の矜持というものであろう。

喫茶アマゾン

京都市東山区下堀詰町235

電話:075-561-8875

営業時間:7:30~20:00※日曜は15:30まで

定休日:水曜

https://cafe-amazon-kyoto.com

「和風トースト」800円(税込)

*掲載情報は2023年6月号掲載時点のものです。

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坂本 綾(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「純喫茶の和風トーストと学生街の活気で目覚める」。