京の朝食
写真・木村有希 文・永野香(アリカ)
1888年(明治21年)、長州藩の京屋敷跡に誕生した京都有数の老舗ホテル『ホテルオークラ京都』。以来、古都の西洋風ホテルの嚆矢として数々の貴顕要人をもてなしてきた。和朝食の会場になる『京料理 入舟』では、その歴史にふさわしい、実に贅沢な朝の献立が用意されている。
庭に臨む個室で供される1日2組限定の和朝食「京の日の出」は、老舗『湯葉弥』のゆばに『並河商店』の豆腐、美山の平飼い玉子、舞鶴漁港の京鰆、京丹後市峰山の黒大豆味噌など、京都の滋味を盛りこんだ全10品。
ここが6階だということを忘れさせる庭にはモミジ、ツバキ、サツキと四季折々の表情を見せる植栽があり、その向こうには東山連峰も望める。朝の日差しにたなびく雲などの趣深い眺めとともに、ゆったりご馳走が楽しめるというわけだ。
まずは、自家製ちりめんじゃこの山椒煮や、さわやかな蟹の酢の物など、小鉢5種に舌鼓。続いて京鰆の塩焼き、出汁巻玉子、香り豊かな針柚子添えの焚合せなどのやさしい味わいの品々のあと、いよいよ登場するのがメインのすっぽん小鍋仕立て。
とろりとしたスープを口にすれば、その深い旨みとすっきりとした後口に驚かされる。まさに「目の覚める」インパクトの味わいだ。料理長の臼井大輔さんに聞くと「水に酒、昆布だけで炊いています。沸騰してから約1時間、身が躍るほどぐらぐらさせたり、落ち着かせたりと火加減に注意しながら灰汁をていねいにすくって除き、すっぽんの旨みを引き出します。
最後に生姜を搾り、ほんの少し淡口醤油を垂らすだけ」。滋養豊かなすっぽんの出汁がしみ出た鍋は、一口含むごとにぽかぽかと血の巡りがよくなっていくようで、そのエキスがしみた焼葱や焼麩も味が深い。
信楽焼の土鍋で供されるご飯は丹後のコシヒカリ。粒の立った炊きたてご飯には、炭火であぶった海苔をのせて。シメの黒大豆味噌汁や壬生菜などの京漬物まで、味の流れをよく考え抜かれた献立は相当のボリュームにもかかわらず、不思議とするりとお腹に収まる。
朝食の献立にすっぽんが加わったきっかけは、「コラーゲンも豊富だし、お鍋にしては?」という女性スタッフの声だったとか。たちまち人気となり、すでに十数年。宿泊客以外も味わえるとあって、今では幅広いファンがつく。心身がととのい内側から力がみなぎるような朝餐。1日の始まりに堪能すれば、京都巡りの足取りも軽くなることうけあいだ。
京料理 入舟
京都市中京区河原町御池 ホテルオークラ京都6階
電話:075-254-2537
営業時間:朝食7:00~10:00(L.O.)、昼食11:30~15:00(L.O.14:30)、夕食17:30~21:00(L.O.20:00)
定休日:なし ※ 昼食・夕食は月曜休
「京の日の出」8,470円(税・サ込)
9:00までの最終入店。食材やメニュー内容は時季により異なる。
*掲載情報は2022年11月号掲載時点のものです。
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永野香(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「目の覚める旨み“すっぽん”でととのう朝」。