京の朝食
写真・木村有希 文・白木麻紀子(アリカ)
大文字山のふもとにあり、東山文化の象徴といわれる銀閣寺(慈照寺)。京都を訪れたなら一度は足を運んだ人も多いだろう。この寺の総門に続くにぎやかな参道の一角に、おくどさん(竈)を店先に据えた古民家風の一軒が佇む。それが、自家米を使った素朴な料理で旅人をもてなす『御米司ふみや』だ。
銀閣寺の開門頃に合わせて開かれるこの店、朝の定番は「京の里山セット」。土鍋で炊き上げる白飯と生卵、白味噌に生麸を浮かべた汁に漬物が付くシンプルな朝食だ。米は、桂川の源流がある山間の里、京都市北部の京北で育てたコシヒカリ。卵は、そのほとんどが料亭などに出荷され市場に出回らないため“幻の卵”とも呼ばれる『京都大原山田農園』の平飼い鶏の「初生卵」を使う。
朝日が注ぐ庭を望む席に座り、湯気が立ち上る白飯をひと口。ひと粒ひと粒存在感がありつつ、ふわりと軽く軟らかで控えめな甘み。その上品なご飯に自家製出汁醤油をひと垂らし。先に味を付けてから生卵を乗せ、食べるのがおすすめだという。小ぶりの黄身をくずしながら口に運べば、スルスルと喉を通り抜ける。コクがありつつも、癖のないすっきりした滋味にじんわり感動が広がる。
店のオープンは2014年(平成26年)。銀閣寺の門前で生まれ育ったオーナーが友人の田んぼを譲り受けることになり米作を始めた。すると思いのほかおいしい米が穫れ、「このお米の味を広く知ってもらいたい」と考え開店したという。自田で収穫した玄米を約16℃の貯蔵庫で保管し、一定の水分量をキープ。その玄米を毎朝使う分だけ精米し、土鍋で炊き上げる。
使用する土鍋は、堅牢さとその機能美からプロの料理人がこぞって愛用する滋賀県信楽の雲井窯製だ。「芯は残らず軟らかすぎず、噛むと甘みが感じられるようなお米に炊き上げています。水は庭の井戸からくみ上げる大文字山の伏流水を濾過したもの。まろやかな軟水で、素材の味をしっかりと引き出してくれます」と語るのは、店長・對間怜記さん。
やはり土鍋で炊く白飯を献立の主役とする日本料理店『草喰なかひがし』出身で土鍋使いの達人だ。土鍋で炊いたあとはおひつへ移し、余分な水蒸気を飛ばせば、極上の白飯が出来上がる。
天気の良い日は、有明海産海苔で包んだおにぎりを店頭で買い、大文字山へ登るのも一興。米の美味を噛み締める朝餉は、きっと旅人の英気を養ってくれる。
御米司ふみや
京都市左京区銀閣寺町65
電話:075-746-4560
営業時間:9:00~16:30 ※土・日曜は8:30から
定休日:不定休
「京の里山セット」945円(税込)
*掲載情報は2023年5月号掲載時点のものです。
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白木麻紀子(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「土鍋で炊くご馳走 卵かけご飯で始める 東山の朝」。