京の朝食
写真・木村有希 文・伊藤祐樹(アリカ)
京都は、伝統を重んじる土地柄ながら“新しもん好き”も多く、様々な文化を取り入れることで独自の進化を遂げてきた。ゆえに、実のところ各国料理の店は数多い。そんな古都の朝に、スパイス香る新風が吹いている――。
朝7時半すぎ、四条寺町の交差点から寺町通を南下すると、芳しい香辛料の匂いに足が止まる。香りに誘われビルの階段を上がっていくと現れるのが、日本の朝定食をカレーで表現する『SPICEGATE』だ。噂を聞きつけたカレーファンが既に全国から足を運んでいる話題の一軒で、人気ビリヤニ専門店『INDIA GATE』の2号店。
ミュージシャンでもあるオーナーが、全国を旅するなかで出合ったインドの香り米・バスマティライスの美味しさに心を射抜かれ、その味を地元・京都の人にも知ってもらいたいと開業した。この2号店ではバスマティライスを京風出汁の“朝カレー”で提供する。「バスマティライスは日本米と違い糖質が少なく、血糖値の急な上昇を抑えられるので、朝食にもぴったりなんです」とスタッフの仁下さん。
看板メニューの「京風スパイス朝定食鶏キーマと魚介出汁のカレー」は、鶏のキーマカレーを中心に、千枚漬けやアサリの佃煮、小松菜のおひたしなどをほんのりスパイスで味付けした約10種類のおばんざいが盛られた一皿。その上に、アサリや昆布などの魚介出汁と、マスタードシードやコリアンダーシードなどのスパイスを合わせたスープ状のカレーをかけて、少しずつ混ぜながら食べる。
カレーや副菜が一皿に載った南インドの定食・ミールスに近いスタイルだが、口に運べば想像以上に“和”な味わいに驚かされる。まるでお茶漬けのようにさらさらと食べられる、あっさりした旨みと口当たりが新感覚だ。朝食にふさわしく刺激は控えめになるようスパイスの量を調整。
また、バスマティライスは『祇園 北川半兵衞』の宇治煎茶で炊き、茶葉の旨み成分で味を深めているという。ほのかに鼻腔に広がる茶の香りが一層“和”を感じさせ、なるほど、まさに京都とインドが融合した朝定食である。
店で使う100種類以上の本場インドのスパイスは購入も可能。「まだまだ京都ではスパイス専門店が少ないので、定番から珍しいものまで幅広く選んでいただけるようにしました。カレーを食べた後、気に入ったスパイスを気軽に買って帰ることができる拠点になればと」。
スパイスの門戸を開き、京の朝食文化の新境地を拓いた一軒へぜひ。
SPICE GATE
京都市下京区恵美須之町546-1 しきさい寺町ビル2階
電話:075-741-7554
営業時間:7:30~11:00、11:30~16:00(L.O.)
※水・金曜は21:00(L.O.)まで ※スパイス販売は7:30~16:00
定休日:火曜
「京風スパイス朝定食 鶏キーマと魚介出汁のカレー」1,200円(税込)
*掲載情報は2023年7月号掲載時点のものです。
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伊藤祐樹(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「京とインドが奏でる和音 スパイス香る朝定食」。