京の朝食
写真・武甕育子 文・伊藤祐樹(アリカ)
旅の街・京都。名所旧跡に囲まれ、重層的な歴史をもつここでは、その文化が染み込んだ「京の朝食」を楽しみたい。
京都は和の印象とは裏腹に、実はコーヒー消費量が全国一。喫茶文化が根付く街で誰もが知る名店といえば、1940年(昭和15年)創業の『イノダコーヒ』だ。「イノダ、行こか」と、京都人は何かにつけ家族や友人と誘い合う。
市内に6軒ある中で特に象徴的なのが、堺町通に佇む本店。3棟が連なり、開放的な吹き抜けが団欒にふさわしい本館、開業当時の内装を復元した旧館、創業者であり画家の猪田七郎が集めた調度品が集うメモリアル館と、趣の異なるレトロモダンな空間が日常と非日常のあわいへと誘う。
京都人が「飲むとホッと落ち着く」というコーヒーは創業時から変わらぬ自家焙煎で、ネルドリップでていねいに淹れられる。
看板ブレンドの「アラビアの真珠」がミルクと砂糖入りで供されるのは、お客がつい会話に夢中になり冷めるとうまく混ざらなくなるのを気遣って始めたサービスだという。深煎りのモカベースにミルクが相まって、程よい酸味とまろやかな口当たりがクセになる一杯だ。
そんなコーヒーと共に、優雅な朝を過ごせるメニューがある。その名も「京の朝食」。バターの香りが芳しいクロワッサンとサラダにハム、たっぷりのスクランブルエッグなどがのったホテルの朝食を思わせるスタイルだ。なかでもハムは塩漬けもスモークの時間も細かく指定して工房に特注するこだわりの一品。
肉厚で食感が良く、噛み締めるとジューシーな旨みが広がる。「以前は宿泊先で朝食をとった後に来て下さるお客様が多かったんです。当店でホテルのような朝食が楽しめたら、大切な観光の時間も延びるだろうという思いから生まれたメニュー。
ここでお腹いっぱい召し上がっていただくのも良い思い出になるようです」と業務課長の国本信夫さん。国本さんがおすすめの席は、本館奥の中庭。朝日の注ぐテーブルでは、店内で飼うインコのさえずりも聞こえ、全身で朝の心地良さに浸ることができる。
イノダには毎日通う常連客が少なくない。毎朝開店前にスタッフより先にドアを開け、決まった席に座る。そんな「イノダの日常」に混じることができるのも京都旅の醍醐味。「大事な朝の時間を当店で過ごして1日の活力にしていただきたい。そしてお客様が出発されるのをお見送りする。それが私たちにとっての『京の朝』ですね」。
イノダコーヒ本店
京都市中京区堺町通三条下ル道祐町140
電話:075-221-0507
営業時間:7:00~18:00
定休日:なし
「京の朝食」1,600円(税込)※提供は11:00まで
※ 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
*掲載情報は2022年1&2月号掲載時点のものです。
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伊藤祐樹(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「旅の初めを彩る喫茶名店の優雅な時間」。