今月の一皿

メレンゲ卵ですき焼き

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

『あさい』のために厳選された近江牛。仲居さんがカウンター越しに焼いてくれるすき焼きは、メレンゲのように泡立てた卵でいただく。懐かしいようで新しい美食の体験をぜひ

カウンターのある店が好きだが、それがあまりないジャンルがある。その代表格がすき焼きだ。

ところが虎ノ門にある『すき焼き あさい』は、カウンターのみのすき焼き店だ。大通りに面した入口には「あさい」としか表記されていなくて、ちょっと入るのに躊躇する。でも、暖簾をくぐり店内に入ると、すき焼きのいい香りがうっすらと漂ってくる。

『あさい』のすき焼きは、かつて元赤坂にあり、常連に惜しまれながら閉店した名店の流れを引き継いでいる。そこでも働いていた女将の篠﨑由美さんが「懐かしい、といらしてくださるお客様もいます」と笑って話してくれた。

最大の特徴は、なんといってもすき焼きにつけて食べるメレンゲ卵。仲居さんがお客の目の前で卵を割って、メレンゲを作ってくれる。ふわっふわで綿みたいだ。そして、土佐酢、梅肉を溶いた卵液とで、2つの味が楽しめるようになっている。

牛出汁の茶わん蒸しなどの前菜の後は待ちに待ったお肉の登場だ。有名精肉店『サカエヤ』からの近江牛の1枚目は、なんと4ミリの分厚さ。

それを目の前の鉄鍋で仲居さんが焼いてくれる。すき焼きをぐつぐつと「煮」ずに、この「焼く」ことが重要である。関東・関西風のいいとこ取りだ。

4ミリのお肉を、さあ、メレンゲをたっぷりとくるんで一口、二口と豪快に口の中へ。そして2枚目は3ミリに。何回も試行錯誤を繰り返し、4、3、3ミリの3枚にたどり着いたそうだ。確かに食べるごとに"肉の顔"が変わり、満足度がどんどん増していく。

すき焼きの最後を飾るのは、しらたき。じっくりと焼いて味がしみ込んだところに七色の唐辛子をふりかけていただく。これがなんとも美味しい。

ちなみに合間に焼いてくれる野菜のレンコンやジャガイモの味も主役級だ。そして最後は料理長の作り立て甘味でコースは締めくくられる。

左:料理長 廣瀬和也氏 右:女将 篠﨑 由美氏

カウンター越しに仲居さんと話しながら一人でも行けるすき焼き……素晴らしいの一言だ。

すき焼き あさい

メニューは「おまかせコース」20,900円で、季節の前菜が3品、すき焼き、ザク、ご飯、お味噌汁、甘味の構成。日本料理の名店で修業を積んだ廣瀬料理長の繊細な料理と、女将の篠﨑さんの熟練の技で焼かれるすき焼きのコンビネーションは絶妙だ。お昼にはランチコース(13,200円)や牛鍋(8,800円)なども。すき焼きと楽しみたいワインはブルゴーニュを中心にボトルも常時90アイテムほどを取りそろえる。*すべて税込

住所:東京都港区虎ノ門3-11-15 SVAX TTビル1F

電話:03-6452-9995

営業時間:ランチ11:30~15:00、ディナー17:30~23:00(21:00L.O.)

定休日:日・水曜

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2025年3月号掲載時点のものです。

Recommends

会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ
会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ

電子ブック閲覧方法はこちら

下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「メレンゲ卵ですき焼き」。