銀座より道、まわり道
文・山口正介 イラスト・駿高泰子
Text by Shosuke YAMAGUCHI
Illustration by Yasuco SUDAKA
小さい頃から生き物が好きだということは、何度も書いている。普通だと猫や犬を飼うことになるのだろうが、僕の場合は水生生物が好きになってしまった。
僕とはまったく逆に、両親は生き物が苦手であった。辛うじて、わが家の中にスペースを与えられて許されたのが、小さな水槽による熱帯魚の飼育だった。
ところが、小学校の5年生の頃だったか、父の知人からいただいたグッピーを、飼い方もわからず、翌朝までに死なせてしまった。小さなメダカほどの魚が死んで僕が涙を流すのを見た両親は、そんなことで泣くぐらいならば、もう飼っちゃ駄目だ、と言う。
長じて多少の勉強をしてから、再度、熱帯魚に挑戦したのは30歳近くになってからであった。一時は幅180センチもある水槽に各種の熱帯魚と水草を入れて、専門誌のグラビアページを飾ったこともあった。
熱帯では種の保存のために、現地での採取が厳しく制限されているという今日この頃、水槽で世代交代して貴重な生物を保護する観点からも、熱帯魚の飼育は重要な貢献をしている。趣味としての熱帯魚の飼育には、時々の流行りがある。アロワナやピラルクという巨大魚の時代、大型のナマズを中心とする怪魚ブームがあり、室内に水族館レベルの水槽を置くこともトレンドとなった。
それはともかくとして、そんな僕なので、散歩の道すがら、熱帯魚ショップを見かけると、ついついドアを開けて見学させていただくことになる。
最近も、まさか銀座に、こんな大規模な専門店があるのかと驚いたのが、熱帯魚ショップである『パウパウアクアガーデン』だ。
お店のホームページにあるコピーによると、都内最大級の熱帯魚直輸入直販店で、熱帯魚(アロワナ、プレコ、グッピー、コリドラス、テトラ)、エビ、水草、アクア用品、昆虫、サンゴ、海水魚、金魚、メダカ、カメ、川魚、水槽、エサ、フィルターなどのアクアリウム用品を販売しているとある。
今現在は各種の水草でアマゾンなり東南アジアなり、または独自の水景を創り、小型の鑑賞魚を入れて楽しむということが主流のようだ。伝統的な盆栽や箱庭にも通じるところがあり、なかなかに人気だ。このお店でも、店頭には多種多様な水草が並んでいる。
国産ではあるが、このところの流行である、品種改良された色鮮やかなメダカも数十種が並び、高級な趣味となった。
2階には、飼育器具の売り場があり、洗練されたデザインのものが並んでいて便利だ。
やまぐち しょうすけ
作家、映画評論家。桐朋学園演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て小説、エッセイの分野へ。近著に『父・山口瞳自身/息子が語る家族ヒストリー』(P+D BOOKS 小学館)。
*掲載情報は2025年3月号掲載時点のものです。
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