家事按分とは?個人事業主が知っておきたい按分比率の計算方法

更新日:2024年3月1日

副業を含め個人で事業を行っていると、「プライベート用のスマートフォンを事業にも使う」「自宅の一室を副業のための仕事部屋にしている」など、プライベートと事業で兼用することがあります。このような場合に、事業で使った分の費用を、経費として計上する方法が家事按分です。
ここでは、家事按分について、家事按分できる経費や按分する割合、税務調査が行われるかどうかなどを解説します。

家事按分とは、事業用とプライベート用の経費を割合で分けること

家事按分とは、事業とプライベートを兼ねた支出について、事業分だけを経費計上するために、割合で分ける計算方法のことです。個人事業主が自宅などをプライベートと事業の両方に使っている場合に、家賃や光熱費などの一部を経費として計上することができます。個人事業主がプライベートと事業の両方で使っていれば家事按分の経費の対象となります。家事按分できる代表的な経費としては、次に挙げる家賃、水道光熱費、通信費、自動車関連費用などがあります。なお、事業内容は本業や副業を問いません。

家賃

家賃は、自宅賃貸マンションの一室を仕事部屋にしている場合に対象となります。店舗付き物件を借りていて、1階の店舗部分で事業を営み、2階以上の居住区部分で生活しているといった場合も対象です。なお、住宅ローンの返済分は家事按分できませんが、利息分は家事按分の対象となります。

水道光熱費

水道光熱費は、自宅で事業を行っている場合や、店舗付き住宅で事業を営んでいる場合の電気代、水道代、ガス代などが該当します。なお、ガス代や水道代は、業務と直接関係があれば経費にできます。自宅で料理教室を開いているなど、明らかに事業を行ううえでガスや水道が必要であると示せるのであれば、ガス代や水道代も家事按分が可能です。

通信費

通信費は、インターネット回線使用料やスマートフォンなどの月額使用料などが該当します。自宅で事業を行っていて、インターネットやスマートフォンの回線をプライベートと事業の両方で使用している場合は按分が可能です。

自動車関連費用

自動車関連費用は、ガソリン代、メンテナンス費用、税金などが該当します。なお、業務を行う現場に行くために通った有料道路の通行料や、現場で利用した駐車場代など、事業のために使用した場合の代金は、家事按分不要で全額を経費として計上できます。

家事按分する割合と計算例

プライベートと事業の両方で使用した費用のうち、家事按分で経費計上できるのは、事業で使った分だけですが、按分する割合に決まりはありません。ただし、税務調査を受けた場合、家事按分した割合の明確な根拠が必要です。一般的には、以下のように計算をして、按分比率(家事按分する割合)を求めます。

家賃を家事按分する場合

家賃を家事按分する場合は、居住スペース全体の床面積のうち、事業用に使っている床面積の割合を基準にするのが一般的です。
たとえば、自宅兼事務所の全体の床面積が80平方メートルで、10平方メートルある一室を事業用スペースとして使っているとします。この場合の按分比率は、次のように計算します。

<家賃の按分比率の計算例>

10平方メートル÷80平方メートル=12.5%

家賃の按分比率は12.5%になるため、月の家賃が10万円なら、経費計上できる金額は月1万2,500円になります。
なお、家事按分の基準には、面積のほか時間も有効です。1週間で使用する総時間のうち、事業用として使っている時間などを按分比率の基準にすることができます。

水道光熱費を家事按分する場合

水道光熱費を家事按分する場合は、事業で使用した時間を基準にすることが一般的です。
たとえば、1週間のうち平日8時間、自宅で事業を行っている場合、週の合計時間に占める業務時間の按分比率は、次のように計算します。

<水道光熱費の按分比率の計算例>

(8時間×5日)÷(24時間×7日)=40時間÷168時間=約24%

水道光熱費の按分比率は約24%です。自宅兼事務所の電気代が月1万円なら、経費計上できる金額は月2,400円になります。
家族と暮らしていて、時間を基準にすることが難しい場合は、家賃のように面積を基準にする方法も有効です。

通信費を家事按分する場合

インターネット回線使用料やスマートフォンなどの月額使用料など通信費を家事按分する場合は、使用日数や使用時間を基準に按分比率を計算します。
たとえば、毎日8時間自宅で業務を行っている場合、週の合計時間に占める業務時間の按分比率は、次のように計算します。

<通信費の按分比率の計算例>

(8時間×5日)÷(24時間×7日)=40時間÷168時間=約24%

通信費の按分比率は約24%になるため、自宅兼事務所のインターネット回線使用料が月額6,000円なら、経費計上できる金額は月1,440円となります。

自動車関連費用

車の購入費用やリース代、税金、車検代、ガソリン代、駐車場代などの自動車関連費用を家事按分する場合は、事業で車を使用した日数や時間、走行距離などを基準に按分比率を計算します。使用時間や走行距離を把握するために、記録を付けておくようにしましょう。
たとえば、年間の走行距離が1万km、そのうち事業のために走行した距離が4,000kmの場合、按分比率は次のように計算します。

<自動車関連費用の按分比率の計算例>

4,000km÷1万km=40%

自動車関連費用の按分比率は40%となり、車のリース代が月2万円、ガソリン代が月8,000円であれば、経費計上できる金額は、リース代は月8,000円、ガソリン代は月3,200円となります。

確定申告における家事按分の取り扱い

家事按分を行って、事業で使用した分を計算するのは、確定申告で正確に経費を計上するためです。基本的に、事業での必要性や、実際に使用したことが認められれば、按分比率で計算した費用を経費として計上できます。しかし、青色申告と白色申告では、家事按分の取り扱いに違いがあります。

青色申告での取り扱い

青色申告での家事按分の取り扱いは、特に制限はありません。事業を行うために利用した分について明確な根拠を示せるなら、家事按分を行って、業務上利用した分だけ経費として計上できます。

白色申告での取り扱い

白色申告での家事按分の取り扱いには、一定の制限があります。白色申告で家事按分を行えるのは「事業に関わる費用の割合が全体の50%を超える」、もしくは「事業のために使ったことが明らかに区分できる」費用だけです。たとえば、事業のために使った分の電気代が全体の20%だったとしたら、青色申告では20%分を経費に計上できますが、白色申告では50%に届かないため、計上できません。
ただし、メーターが別についているなど、事業のために使った分だけを明らかに区分することができる場合は、50%以下でも事業利用分を経費に計上できます。

家事按分した場合の記帳方法

家事按分の記帳方法としては、毎月記帳する方法と1年分まとめて記帳する方法があります。1年分まとめて記帳すれば、計算が簡単で、手間もかからないのでおすすめです。
例として、自宅兼事務所の賃料が月10万円で、時間基準での計算で20%を事業利用(地代家賃2万円)、80%をプライベートで利用(事業主貸8万円)している場合は、以下のような処理になります。

■毎月の記帳の場合

毎月家事按分を行う場合、借方に地代家賃と事業主貸を記載し、借方に賃料をまとめた10万円を記載します。
日付 摘要 借方 貸方
6月30日 自宅兼事務所の賃料 地代家賃 20,000円 普通預金 100,000円
事業主貸 80,000円

■1年分まとめて記帳する場合(毎月の記帳内容)

毎月の記帳では、月額賃料を全額、地代家賃として記帳します。
日付 摘要 借方 貸方
6月30日 自宅兼事務所の賃料 地代家賃 100,000円 普通預金 100,000円
そして決算日(12月31日)に、1年間の賃料120万円(月10万円×12ヵ月分)のうち、80%をプライベートでの利用に振り替える処理を行います。具体的には、振替分は「事業主貸」として処理します。

■1年分まとめて記帳する場合(決算日の記帳内容)

日付 摘要 借方 貸方
12月31日 自宅兼事務所の賃料の按分
(事業主貸80%)
事業主貸 800,000円 地代家賃 800,000円

税務調査に備えた家事按分の注意点

税務調査とは、申告内容に間違いがないかを確認するため、税務署が行う調査のことです。裁判所の令状によって行われる「強制捜査」とあらかじめ訪問日時の連絡が来たうえで行われる「任意調査」があります。強制捜査は、脱税の疑いがあり、なおかつ脱税額が大きく脱税の隠ぺい工作が悪質といった場合に限られており、脱税の疑いがない法人や個人が対象の場合は任意調査になります。
家事按分した経費について税務調査を行うかどうかは税務署に決定権があり、正確に家事按分を行い、正直に申告を行っていたとしても、税務調査の対象となることはあります。税務調査を受けた場合、家事按分周りは税務調査で指摘されやすいため、按分比率の計算や記帳を行うときから、次のようなことに注意しておきましょう。

経費算入の基準を明確にする

家事按分を行って経費算入を行うには、按分比率の基準を明確にしておくことが大切です。たとえば電気代について、「感覚的に半分ぐらいは事業に使ったはずなので50%」といった曖昧な基準で経費計上することはできません。また、今月は時間基準、来月は面積基準など、月によって基準を変えることもできません。
一貫した基準のもとに、利用時間などの明確な根拠に基づいて算出することと、税務調査があった場合に対応できるよう、領収書や按分比率を算出した根拠をしっかり残しておきましょう。

生計を共にする家族や親族に払った家賃は経費算入しない

生計を共にする家族・親族間に支払った家賃は、地代家賃として経費計上することはできません。例として、親と同居して生計を共にしており、家の一室を事業用スペースとして使わせてもらう代わりに、月々いくらかのお金を支払っているような場合が該当します。間違えないように注意しましょう。

按分比率に迷う場合は専門家に相談する

按分比率の計算には、「この計算方法なら絶対に問題ない」という方法がないので、迷ったら専門家に相談するのが確実です。疑問や不安を感じたり、按分比率に迷ったりした場合は、早めに税理士などに相談しましょう。

経費管理を簡単にしてくれるビジネスカード
ダイナースクラブ ビジネスカード
ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカード(経費決済専用カード)

所得税や住民税は、収入から経費を差し引いた所得に対してかかります。そのため、納める税金の額を抑えるには、家事按分も含めて、計上できる経費を漏れなく正確に計上することが大切です。
経費の計上漏れを防ぐために有効な方法のひとつは、事業に関する支払いはできる限り「ビジネスカード」と呼ばれるクレジットカードを使うことです。ビジネスカードとは、個人事業主や中小企業のビジネスオーナーなどに向けて設計された法人カードのことを指します。
事業用の支払いをビジネスカードに一本化すれば、クレジットカードの明細をチェックするだけですべての支出が把握でき、計上漏れが防げるのはもちろん、間違えてプライベートでの支出を計上してしまうミスも防げます。

ビジネスカードにもさまざまな種類がありますが、ビジネスの場で広く利用することを考えると、信頼につながるカードブランド「ダイナースクラブ」がおすすめです。
ダイナースクラブのカードラインナップには、ビジネスに特化した個人カード「ダイナースクラブ ビジネスカード」と、個人向けのダイナースクラブカードに付帯できる経費決済専用の「ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカード」があります。それぞれの特徴を紹介します。

ダイナースクラブ ビジネスカードの特徴

ダイナースクラブ ビジネスカードは、個人事業主・法人経営者向けのビジネス専用カードです。法人・団体などの代表者や役員、または個人事業主であればお申し込みいただけます。
ダイナースクラブ ビジネスカードの特徴は次の通りです。
 

・企業役員や医師、弁護士など、社会的信用の高い人々に利用されてきた実績がある

ダイナースクラブはアメリカで1950年に誕生し、クレジットカード業界をリードしてきたカードです。日本では1961年から発行を開始し、以来、企業の役員、医師や弁護士といった国家資格を有する方など、社会的信用の高い方をメンバーとしてお迎えしてきました。
創業当時から今に至るまでの、クラブの信頼とステータスを高めるための積み上げがあるからこそ、ステータスカードとして広く認知されています。

・ダイナースクラブ ビジネスカードならではのサービスが利用できる

ダイナースクラブカードで利用できるサービスにプラスして、さらにビジネスに役立つ優待特典も多数ご利用いただけます。
たとえば、会計ソフトとの連携、税務相談や法律相談などの優待サービスがあるほか、事業承継やM&Aなどのビジネスコンサルティングサービスなどもあります。ゴルファー保険をはじめとするゴルフ優待サービスや加盟店優待、JALオンラインのインターネット予約サービスなどもご利用いただけますので、さまざまなビジネスシーンにご活用ください。

・ポイントの有効期限なしで、ワンランク上の賞品と交換できる

ダイナースクラブ ビジネスカードは、ポイントに有効期限がないので、好きなタイミングでポイントをご利用いただけます。貯めたポイントは、厳選グルメやオフィスでも活躍する人気メーカーの家電、ゴルフ用品、各種商品券などに交換可能です。いずれもステータスカードにふさわしい、ワンランク上の賞品がラインナップされています。

・利用可能枠に一律の制限なし

ダイナースクラブ ビジネスカードは、ご利用可能枠に一律の制限はありません。一人ひとりの利用状況や支払い実績に応じて、個別に設定されます。高額なお買い物の際は事前にご相談いただけるサービスもあり、高額なお買い物にも利用しやすくなっています。

・登記事項証明書の提出が不要、個人の信用で申し込みできる

ダイナースクラブ ビジネスカードは、申込時に登記事項証明書(登記簿謄本)の提出は必要なく、事業主の信用情報だけでお申し込みができます。法人経営者・個人事業主のどちらでも、お申し込みが可能です。

・充実のビジネス特典がある

加盟店優待「ビジネス・オファー」、会計ソフト「freee」の優待、会員限定の招待イベントなど、ビジネスカードならではの特典も充実しています。

・従業員を含めた経費の一元管理が可能

ダイナースクラブ ビジネスカードは、18歳以上の従業員に対し、追加カードを4枚まで年会費無料で発行可能です(3、4枚目は1枚あたり年間5,500円(税込)のカード維持手数料がかかります)。従業員を含めた経費の一元管理が可能になり、出張費の精算や仮払いの手間も省けます。
■ダイナースクラブ ビジネスカードの主な特徴
年会費 27,500円(税込)
ポイント付与率 100円につき1ポイント
※税金の納付や一部加盟店の利用は、200円につき1ポイント
旅行傷害保険 最高補償額1億円(海外・国内)
国際ブランド ダイナースクラブ(Diners Club)
追加会員 年会費無料(追加カード発行は4枚まで)
※カード維持手数料:3,4枚目のみ1枚あたり年間5,500円(税込)
ETCカード ・基本会員は5枚まで発行可能
・追加会員は1会員につき1枚まで発行可能
ポイント有効期限 なし
ショッピング保険 購入日より90日間、年間500万円まで

ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードの特徴

ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードは、法人カードではありませんが、ダイナースクラブカードや各種提携カードの所有者が、追加で申し込める経費決済専用カードです。法人格を持たない個人事業主でも利用でき、ダイナースクラブカードをプライベート用、ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードを事業用と使い分けることで、経費管理の手間を大幅に軽減できます。
ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードには、主に次のような特徴があります。

・プライベート用と事業用に分けて支払口座の設定が可能

ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードと、本会員カードとなるダイナースクラブカードとで、別々の支払口座の設定が可能。法人口座の設定もでき、利用代金明細書も別になるため、プライベート用と事業用に分けた経費の管理が容易になります。

・年間手数料は経費に計上可能。ポイントは2枚のカードを合算して使える

ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードの年間手数料は、事業に関わる支出として経費計上できます。年間手数料が所得税の節税につながるため、お得なクレジットカードといえるでしょう。
なお、クレジットカードの利用で貯まったポイントは本会員カードのポイントと合算して利用できます。

・ダイナースクラブカードならではのサービスを利用できる

ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードでも、JALオンラインのインターネット予約サービスなど、ビジネスに役立つサービスをご利用いただけます。さまざまなビジネスシーンにお役立てください。

■ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカードの主な特徴

年間手数料 5,500円(税込)
ポイント換算率 100円につき1ポイント
※税金の納付や一部加盟店の利用は、200円につき1ポイント
旅行傷害保険 最高補償額1億円(海外・国内)
国際ブランド ダイナースクラブ(Diners Club)
ETCカード カード会員本人が所有する車両台数(車載器台数)に応じ5枚まで
※年会費・カード発行手数料無料
ポイント有効期限 なし
ショッピング保険 購入日より90日間、年間500万円まで

※ダイナースクラブ ビジネス・アカウントカード単体の発行はできません。

ビジネスカードを活用して家事按分をしっかり行おう

副業を持つ人を含めて個人事業主は、プライベートと事業の両方で使用する物が多くあります。家事按分を行うことで、事業で使った分は経費として計上できるため、必ず計上するようにしましょう。もしも税務調査が行われたとしても、按分比率の基準を明確にしたうえで正しく記帳していれば、慌てる必要はありません。
なお、家事按分で利用する費用の管理も含め、経費管理は手間がかかります。そこで、経費の支払いをビジネスカードに一本化して、費用決済はすべてそのカードで行うようにすれば、経費管理を簡単にすることが可能です。

ビジネスカードはさまざまな種類があり、どのカードを選ぶか迷うかもしれませんが、ビジネスカードを選ぶ際に重要な要素はステータスです。ステータスの高いクレジットカードを持っているということは、安心できるビジネスを展開している証でもあります。ダイナースクラブは、1950年に米国・ニューヨークのレストランで生まれ、日本で最初のクレジットカードを発行した国際ブランド。安心して使えること、さまざまなサービスが支持されていることなどは、60年以上の歴史が証明しています。

ダイナースクラブ ビジネスカードは、JALオンラインのインターネット予約サービスや会計ソフトとの連携など、ビジネスに役立つ特典が充実。法人でも申し込みに登記事項証明書等が不要で、個人の信用のみで審査を受けられる魅力もあります。
ビジネスに寄り添うダイナースクラブカードをぜひお手元に。

※本記事は、2023年12月現在の情報です。

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