祇園祭で立ち寄りたい 茶房3選

7月の京都を雅やかに彩る「祇園祭」。豪華絢爛な山鉾(やまほこ)巡行や勇壮な神輿渡御(みこしとぎょ)をはじめ多種多様な神事・行事が1ヵ月にわたって執り行われる。暑さ厳しいこの季節、お祭り見物の前後に気軽に立ち寄れる、京都ならではの涼が嬉しい茶房・喫茶店をご紹介。

文・新家康規(アリカ) 
写真・木村有希

Text by Yasunori Niiya(Arika Inc.)
Photographs by Yuuki Kimura

京町家で味わう
涼やかな夏の宝石

栖園の「琥珀流し」

栖園の店内

大極殿本舗 六角店 栖園の
「琥珀流し」

 1885年(明治18年)創業の京菓子店『大極殿本舗(だいごくでんほんぽ)』。築約140年の町家を改装した六角店には、甘味処『栖園(せいえん)』が併設されている。

 この店の一番人気は、口の中でほろほろと崩れる柔らかな寒天に月替わりの蜜をかけた「琥珀流し」。祇園祭が開催される7月の蜜は「ペパーミント」。坪庭から差し込む光に輝く様はまるで宝石のようだ。風が心地良く吹き抜ける京町家の趣の中で、涼やかな甘味とともに、ひとときの休息を。

 また祇園祭の時期にだけ、同店の味が販売される場所がある。それが占出山(うらでやま)だ。占出山は、7月17日に開催される前祭(さきまつり)の山鉾巡行に登場する山鉾23基の一つであり、御神体である神功皇后が、右手に釣竿、左手に釣り上げた鮎を持っていることから、鮎釣山(あゆつりやま)の別名で親しまれている。その名にちなみ、占出山の町会所では、求肥を焼き皮で包んだ『大極殿本舗』の鮎菓子「吉兆あゆ」が売られる。山鉾巡行前の宵山の期間(7月13~16日)限定の商品だ。

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香ばしい苦みが爽快な古都のコーヒー

前田珈琲 室町本店の「アイスコーヒー」

店舗併設の焙煎室

前田珈琲 室町本店の「アイスコーヒー」

 2014年、およそ50年ぶりに後祭(あとまつり)が復活した。その巡行で10基の山鉾の先頭を進むのが橋弁慶山。五条大橋で戦う牛若丸と弁慶を御神体とするこの山が建つ地の二軒隣に、1971年(昭和46年)創業の『前田珈琲 室町本店』が店を構える。朝は近隣の常連、昼はビジネスマンが多く立ち寄る、京都人の「普段使い」だ。

 18日から建てられる後祭の山鉾を見物したあとは、創業時よりネルドリップ式の抽出にこだわるアイスコーヒーで一服を。豆はブラジル産をベースに、コロンビア産とグアテマラ産の3種をブレンドしたもの。旧西ドイツ・プロバット社製の焙煎機で深煎りすることで、すっきりとした飲み口ながら、豆が持つ香ばしい苦みが口の中に広がる。45年以上京の人々に愛される、飽きのこないコーヒーだ。

 また後祭の期間中は、店の前で「カプチーノ氷」を販売している。氷の上から自家製珈琲、シロップ、シナモンパウダー、コーヒー練乳、コーヒーゼリーをたっぷりと。氷を食べながら山鉾を眺め歩く――童心に返り祭を愉しむのも一興だ。

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舞妓さんのリクエストが生んだ京飴店の名物氷

家傳京飴 祇園小石の「わがまま氷」

家傳京飴 祇園小石の店内

家傳京飴 祇園小石の「わがまま氷」

 祇園祭は八坂神社の祭礼。その八坂神社の参道でもある祇園商店街の一角に建つのが、京飴の専門店『家傳京飴(かでんきょうあめ)祇園小石』だ。創業81年の店舗に併設された茶房では、秘伝の黒糖蜜を生かした甘味がそろう。中でも夏に人気なのが、5月上旬から9月末まで提供される氷だ。一番人気の黒糖ミルクをはじめ、宇治、ミルク、ひやしあめなど6種が定番。ほかに、季節限定でいちごや梅なども登場する。

 祇園という場所柄、訪れることの多い芸舞妓の「あんみつも氷も一度に食べたい」というリクエストから生まれたのが「わがまま氷」。2色の白玉、抹茶の餅風ゼリー、黒蜜ゼリー、寒天、小豆あんが入ったあんみつの上に、綿雪のようにきめ細かなかき氷がのる。氷を彩る黒糖蜜は、左党の顔もほころぶ甘さ控えめのさっぱり味。

 17日の神幸祭、24日の還幸祭の前後には、店の前で3基の神輿の差し上げが行われ、その勇壮な光景を一目見ようと訪れる人が道を埋め尽くす。山鉾巡行だけではない祇園祭の見どころも楽しみたい。

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大極殿本舗 六角店 栖園

大極殿本舗 六角店 栖園

京都市中京区六角通高倉東入 南側堀之上町120

営業時間 10:00~17:00
定休日 水曜
席 数 20席/全席禁煙

前田珈琲 室町本店

前田珈琲 室町本店

京都市中京区蛸薬師通烏丸西入ル橋弁慶町236

営業時間 7:00~19:00(L.O.18:30)
定休日 無休
席 数 100席/分煙

家傳京飴 祇園小石

家傳京飴 祇園小石

京都市東山区祇園町北側286-2

営業時間 10:30~19:00(L.O.18:00)
定休日 無休
席 数 48席/全席禁煙
  • *ご予約・お問い合わせの際は、ダイナースクラブ ウェブサイトをご覧の旨、お伝えください。
  • *お支払いはダイナースクラブカードをご利用ください。

2017年6月13日公開の「古都 夏の味土産」もあわせてご覧ください。

2017.06.20

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7月の京都を雅に彩る「祇園祭」。各町内に建てられる山鉾や祭を見物した後は、古都ならではの情緒を感じる茶房・喫茶店でひとときの涼を。宝石のように輝く「琥珀流し」。約半世紀の間、京都人に愛される「アイスコーヒー」。舞妓の一言から生まれた「わがまま氷」など、古都ならではの品々でほっと一息。

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