空間全体で感動を演出する日本料理の名店。
緒方
名門の技に支えられた
美味なる食の演出
京都では通りと通りをつなぐ細い路地のことを「ずし(辻子)」と言います。その一つ、呉服問屋が多い室町通に近い膏薬辻子(こうやくのずし)に静かに佇む「緒方」は、京都でも予約困難なことで知られる名店。「室町和久傳」、そして「京都和久傳」で料理長を務めた主人が紡ぐ大胆かつ繊細な料理の数々が全国の食通たちを魅了しています。
伝統の数寄屋建築に凝らした
モダンな意匠
京都の街の中心、四条烏丸交差点から二筋西へ。新町通を越えて風情ある辻子を進むと「緒方」はあります。もとは呉服屋だったという京町家の引き戸を開け、土間に足を踏み入れるとまず目を引くのは、縦に割った竹が一面にあしらわれた天井。真っ直ぐに伸びた竹とその節が織りなす幾何学模様に誘われて奥へと進むと、磨き上げられた栂(つが)のカウンターが見えてきます。この店の主は緒方俊郎(おがたとしろう)さん。京都を代表する老舗旅館「柊家」を経て、名門「和久傳」で13年間勤めたのち、2008年この地に自身の店を構えました。「私はここで、お客様に物語を、流れのようなものを感じてもらええるようにコースを組み立てています」。歴史を感じる佇まいのなかに、現代的な感性が光るこの空間が物語の舞台です。
くつろぎの中に心地よい感動を
椅子に腰掛けると、趣のある坪庭に目を奪われます。周りはオフィス街ですが、さりげなく配された目隠しがそれをすっかり忘れさせてくれ、これから始まるであろう物語への期待が高まります。「安心感のある料理でどう感動を与えられるかが大切だと思っています」。その言葉とともに供されたのは、鮑と茄子の一品。身がよく締まった長崎県・五島列島で獲れた肉厚な鮑をさっと蒸し、控えめに餡がかけられています。何を食べるのかが一目でわかりやすい安心感がありながら、添えられた翡翠色の茄子の美しさに心を揺さぶられ、口に入れればその端正な味に唸ります。視界の隅に入る坪庭の緑と相まって、生命感あふれる“夏”を五感すべてで感じられる一品です。
料理の織りなす物語に
すっと引き込まれる
夏の風物詩・鱧は、鱧の骨でとった出汁で楽しみます。皮がやわらかく、湯引きするとふわっと花が開くように身がほどける兵庫県・沼島産の鱧に添えられるのは、梅肉ではなく自家製の梅干し。引き締まった酸味がほどよく脂ののった鱧によく合います。七夕の時季なら梶の葉を使うなど、緒方さんがコースの中で紡ぎ出す物語は、素材や季節にインスピレーションを得ることから始まるそう。ゆえに素材への思い入れはひとしおで、野菜は地元・京都鷹ヶ峰の有機野菜を、魚介の多くは全国の漁港から直接仕入れています。とりわけ冬には、希少な間人蟹(たいざがに)を使った料理の数々が店の顔ともなっています。「オーソドックスなものばかり」と緒方さんは言いますが、皮をむいた茄子の緑で季節を感じさせるなど、シンプルな姿の背後になにかしらの「仕掛け」が隠されており、食べ進めるほどにどんどん引き込まれてしまう料理なのです。
緒方
住所 | 〒600-8471 京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町726 |
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電話番号 |
075-344-8000
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営業時間 | 昼 16:00~18:30 夜 19:00~20:30(L.O.) |
定休日 | 月曜 |
お料理 |
コースのみ30,000円(税、サービス料10%別)
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お席 | カウンター8席、テーブル個室8席 |
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2015.08.03