SIGNATURE2016年12月号
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ココナッツとペッパーと 「バハマ独特の食材を子どもたちは食べないの?」と聞いてみると、「ココナッツのない食卓は考えられないね」と、レイラちゃんのお父さん。「料理にはできるだけココナッツオイルか、アボカドオイルを使うようにしているわ。デザートやおやつにも、ココナッツを使ったものが多いわ。ココナッツウォーターは、皆、大好きね」と、レイラちゃんのお母さん。身体に必要不可欠な電解質を血液とよく似たバランスで含んでいる「命の水」、ココナッツウォーターは、汗っかきの子どもたちには最適だ。これと並んで、もうひとつ欠かせないものが、〝バハミアン・カレーパウダー〟の存在。イギリス流のカレーパウダーとは異なる配合で、バハマ特有のペッパーが数種配合されている。このバハミアンカレーこそ、どこにもない「バハマ」の味だ(かなり辛い!)。子どもたちのカレーはマイルドだが、幼児のうちから少しずつ「辛さ」に慣れていくようになり、成長と共に大人と同じく、バハマ名産ゴートペッパーを食べることができるレベルに到達するようになる。東洋の芳潤な香りに魅せられ、世界のスパイスを収集・調合していた18世紀の英国の情熱の遺産が、遠く離れたこのバハマの食のアイデンティティの一部になっている。バハミアンカレーは、バハマという土地の歴史と命運を感じさせる味だった。ライター、翻訳家、比較文学研究者、1児の母。長年のフランス暮らし、モロッコ通い、3年間の上海暮らしなどを経て、現在、鹿児島大学教育センター講師。著書に『クスクスの謎』(平凡社)、『パリで出会ったエスニック料理』(木楽舎)などがある。1.コーングリッツ&ソーセージのアボカド添え。まるで南部の大人向け朝食のよう。2.マカロニ&チーズとハニーBBQチキン。3.ココナッツのヴァージンオイル。バハマでは手作りをすることも多い。4.「ちゃんと食べてね」と、アミナさん。5.キノさんのお膝に乗って食べるのが好きなレイラちゃん。1歳を過ぎたら、大人と同じ堅さのものを食べるようにトレーニングをする。47number33  5Photos ©Benoit DupuisBahamas

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