SIGNATURE2016年12月号
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心から美味しいと思う料理。それを実現するのに一番大切なものはなんだろう。才能あふれるシェフのレシピ?一流のスタッフを揃えたチーム?最新鋭の厨房設備? 味しさを表現するのに何よりも必要なものは、食材だ。いかに優秀な料理人でも、悪い食材から極上の料理を作り出すことは不可能なのだ。ここ10年ほど、フランスのトップシェフたちの言葉を聞く中で、一番のキーワードになっているのが〝食材〟だ。「食材自らが持つ力を……」「食材に寄り添って……」「食材本来の味を素直に……」。良質な食材があって初めて料理人たちは理想とする味を引き出せ、自己表現ができる。いかによい食材を手に入れるかが、今や料理人の最大の使命。生産量や収穫量が少ない良質な家畜農家や野菜農家は、多くの料理人たちから熱いラブコールを受け、彼らの食材を使うこと自体が、料理人たちの自慢になっている。パリではなかなか難しいが、地方では、近くの生産者たちとコラボレーションをして、テロワールを感じられるよりよい食材の調達に、シェフたちは余念がない。環境に配慮しながら土地の力を守り、料理人と生産者が共に手を取り合って、その土地ならではの食文化を啓蒙しているのだ。これは、ゲラールが加盟する「ルレ・エ・シャトー」のビジョンにも繋がっている。ウジェニー・レ・バンの隣村のイチゴ農家から、 いや、美名料理人には名生産者が集う40トマトだけで数十種、ナスやピーマンも10種以上を栽培。種類の豊富さと個々の野菜の強い味わいが、多くのシェフを魅了する。メイン畑のほか、住んでいる村の小学校脇にも小さな畑を造り、学校給食用に野菜を供給。「子供たちは我々の未来。彼らに私の野菜を食べてもらえるのは幸せだ」とガルバジェ氏。熱く語る彼の言葉の一つ一つに、野菜への愛情と自負心がこもっている。
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