SIGNATURE2016年12月号
14/68

20Exhibition Informationはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。 永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都 で日本美術をみる【京都国立博物館】』 (集英社クリエイティブ)。 ヨーガン レールは河原で、浜辺で、宝石のように美しい小石を見つけ出す目の持ち主として知られていた。その彼が、索漠とした海洋汚染に抵抗するために選んだ手段が、石垣島の浜辺で拾ったゴミに、自ら穴を開け、紐を通して、美しい実用品をつくることだった。会期:2017年2月5日(日)まで開館時間:9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、12月26日(月)〜2017年1月1日(日) 会場:十和田市現代美術館(青森県十和田市)公式サイト http://towadaartcenter.comお問い合わせ 0176-20-1127根津美術館 庭園の紅葉茶室「閑中庵・牛部屋」*会期中、庭園の紅葉も見ごろを迎えます同じ場所で撮られた異なる風景撮影:ヨーガン レール重要文化財《写生図巻》円山応挙筆 2巻のうち日本・江戸時代 明和7年〜安永元年(1770〜72年) 株式会社千總蔵  *会期中巻替えあり門人の奥文鳴は『仙斎丸山先生伝』の中で、師の応挙が「絵は対象を紙に描き写すだけでなく、それによって新しい画面を作るのでなければ絵画とはいえない」と述べたと記している。写生は、新しい画面を創造するために欠くべからざる技術だったのだ。会期:2016年11月3日(木・祝)〜12月18日(日)開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)休館日:月曜会場:根津美術館(東京・南青山)公式サイト www.nezu-muse.or.jpお問い合わせ 03-3400-2536ヨーガン レール撮影:高木由利子ヨーガン レールの最後の仕事撮影:ヨーガン レール日本美術の冒険 第29回文・橋本麻里 18世紀京都で活躍した円山応挙は、奔騰する感情を筆勢に託したり、筆の掠れや滲みに余情を通わせる絵師ではない。彼は目に映っているもののかたちをどう理解し、それをいかに正確に、また美しく画布の上に描き出すかを考え抜いた、理性の人だ。そのための技術として、徹底した実物の写生、また中国や日本の古画の模写、狩野派、琳派、西洋の透視図法や解剖学にいたるまでを貪欲に学び、そして総合するという、他の誰もなし得なかった偉業を達成した。 だが完成度の高さや、モチーフ・技術の網羅性、バランスのよさゆえに、かえってその絵はつかみどころがないように感じられたり、物足りなく思う向きもあるかもしれない。上田秋成が「京中の絵が皆一手になった」と記し、日本絵画における近世最大の「結節点」となった応挙。それが「普通」に見えてしまうのは、われわれが遠近法を経て、写真、動画など「応挙以後」の現代の視覚の中で生きる人間であればこそ。「奇想」を超える「普通」の迫力を、ぜひ多くの人に知ってほしい。 観察し、画布に写し取るのとは違う方法で、自然と人間との関わりを作品に託してきたのが、2014年に亡くなったデザイナーのヨーガン レールだろう。 1970年代初頭に日本へ移り住んで以降、衣服、家具、キッチンウェアなど、ライフスタイル全般のデザインを提案する先駆け的な存在となった。さらに農園と住まいを沖縄の石垣島につくり、そこでの暮らしから生まれるものを発信し続けた。今展では、海辺に打ち寄せるプラスティックゴミを、照明器具の素材として再生させた作品を中心に、美しい海と汚れた海のコントラストを捉えた写真などが展示される。Exhibition Information開館75周年記念特別展円山応挙−「写生」を超えて−かすColumnSignatureText by Mari Hashimoto2On the Beachヨーガン レール 海からのメッセージArt写生を超えた絵師の眼と、環境を見つめたデザイナー

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る