SIGNATURE2016年12月号
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米が命の「アロセリア」スペイン領カナリア諸島が舞台の本を読んだことがある。題名は忘れたが、楽園みたいな、なんだか淡い素敵な印象を残したまま時が過ぎた。その後、実際にスペインを旅する機会に恵まれた時、その本の魅力を思い出し、存分に楽しむことができた。また、現地で食べた料理は「日本人の味覚に合うな」、というのが第一印象だった。どこの地方に行っても現地の人はとても温かく、それぞれの郷土料理に特徴があり、毎晩の夕食が楽しみだった。特にバルでの新鮮な魚介や、アロセリアでのパエリアは忘れられない。実はアロセリアという言葉は後になって、ここ代官山の日本初のアロセリア、『サルイアモール』のオーナー、ビクトルさんに教わった スペイン語だ。それは「米料理専門店」という意味で、スペイン人はパエリアを食べる時は、決まってアロセリアに行くそうだ。言ってみればイタリア人のピッツェリアみたいな感じだ。スペイン各地の郷土料理と米料理を組み合わせて楽しめる『サルイアモール』。元気で陽気な雰囲気は、まるでスペインの食堂にいるかのような錯覚を起こす。ビクトルさんにお店の名前の由来を尋ねると、それは「塩と愛情」という意味で、料理に必要なもっとも大事な2つの調味料という意味を込めたそう。そんな彼の目からは、熱い愛情と情熱が感じられる。パエリア、カルデロと呼ばれる汁気の多い米料理、そしてパスタのパエリアなど、10種類以上はある中から今月の一皿に選んだのは、王道の「魚介のパエリア」。山形県の米を使ったパエリアは、芯が少し残るくらいの絶妙なバランスを保ちながら、魚介の旨みが全体にいきわたった素晴らしい味だ。「山羊チーズとブルーベリーソースのサラダ」は、山羊のチーズがどーんと主張しているが、自家製ブルーベリーソースの甘酸っぱさが意外にマッチしておもしろい。「ハチノスの煮込み」はマドリードの郷土料理。そのほかにも月ごとのお薦めやハモンイベリコといった生ハムなどのメニューがあり、目移りする。しながら、大勢で楽しく夜を過ごすにはもってこいの店だ。スペインの穏やかな気候を思い出16住所:東京都渋谷区代官山町12-19 第3横芝ビルB1電話:03-5428-6488営業時間:17:30〜24:30(L.O.23:00)定休日:なしアロセリア サル イ アモール『サル イ アモール』の看板メニュー、魚介のパエリア(2人前、3,900円)。スペイン産の山羊のチーズとフレッシュな野菜に、甘酸っぱいブルーベリーソースを合わせたサラダ(1,600円)。じっくりと煮込まれたマドリードの郷土料理、ハチノスの煮込み(1,500円)。ワインはもちろんスペイン産。料理と同じくスペイン各地からのワインがそろう。*価格はすべて税抜です。オーナーNumberPhotographs by Masahiro Okamura(Crossover) Text by Tomoyasu ShitayaVictor Garcia今月の一皿ビクトル・ガルシア115
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