SIGNATURE2016年12月号
11/68
人68Gastromotiva(ガストロる活動テーマの一つが捨てられる食材、いわゆる〝食品ロス〟と〝貧困〟の問題だ。 「このふたつの社会問題は表裏一体で結びついている。いま地球にはその日の食べ物に困る貧困層が8億7000万人もいる。一方で年間生産されている地球上の食料の、3分の1に当たる13億トンが廃棄されている」その皮肉な現実に、料理人は何らかの責任を負うべきだ、というのがマッシモの持論。今夏のリオ・オリンピックでは、会場や選手村の調理業者から廃棄される食材を使って、リオ市の貧困地区で暮らす人々のためのレストラン『Refettorio モティバ食堂)』をオープンさせて話題を呼んだ。この活動は「2020年の東京オリンピックでも、継続したい」と意欲的だ。彼がこの活動に深く関わるきっかけとなったのは、自分の幼少期の食卓の風景だ。「母や祖母の影響は大きかった」とマッシモは振り返る。厨房が遊び場だった少年時代のマッシモは、彼女たちが食材のムダを出さないように、日々気をつかって料理をしていることを記憶している。 「イタリア人にとって〝食べる〟ということは宗教のようなもの」。余すところなく食べ切るというのは、地球や人生に感謝する原点に通じるはずだとマッシモは信じている。近い将来、地元モデナに料理人を育成するための農業大学をつくるつもりだ。「自分が有名になったら、見捨てられている人たちや、忘れ去られている食文化に光を当てると母に約束していた」。自分が受けた恩恵を世界にお返しする時が、ようやくやってきた。私たちの仕事はただ懸命に働くこと、すべては働くことに尽きる。毎日キッチンで働いて成功するのだ――マッシモ・ボットゥーラSignatureInterviewMassimo Bottura15マッシモ・ボットゥーラ|1962年、イタリア・モデナ生まれ。モデナの『オステリア・フランチェスカーナ』を経営。伝統的イタリア料理に斬新な発想を取り入れた料理で、ミシュラン3つ星、ガンベロロッソで3本フォークを獲得。「世界のベストレストラン50」では、2013年以降、『ノーマ』(コペンハーゲン)、『アル・サリェー・ダ・カン・ロカ』(カタルーニャ)とともに熾烈なベスト3のランク争いを繰り広げ、13年・14年の3位、15年の2位を経て、16年ついに最高位に上りつめた。 www.osteriafrancescana.it レヴァンテ(地中海からの東風)時にはマガモ、時にはヤマウズラ、そしてボッリート
元のページ
../index.html#11