SIGNATURE2016年08_09月号
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おとこしごかがいとし 文・永野香(アリカ) 写真・橋本正樹 でも、ひときわ華やかな空気をまとう祇園甲部、その芸舞妓による「都をどり」は、京都で開かれた博覧会に合わせて明治5年(1872年)に誕生。この日一行は、今年で実に第144回を迎える公演を訪れた。破風の車寄せ、鬼瓦や格天井が印象的な建築に、日本庭園も備わる格式ある劇場だ。「世界で一番だとおっしゃるご贔屓もいます」と語るのは、この日会員諸氏を温かく導いたお茶屋『大ヌイ』の若女将・村上斗紫さん。「初々しい舞妓から京舞を極めた芸妓まで演者一同がそろう『総おどり』は、宝塚などのラインダンスの原形とも言われています」。毎年新調するという艶やかな衣装の芸舞妓を間近で鑑賞、150年近く続く〝花街の粋〟を体感するひとときとなった。に招いてのお茶屋遊び。今回特別に披露された舞妓の着付けでは、男衆と呼ばれる専門の着付師による技を目の当たりに。ずっしりと重い金襴緞子の〝だらりの帯〟を、素早くみごとに締め上げる技も、花街の極みである。芸舞妓と語らう宴をさらに盛り上げたのは、ミシュランの星も得た『直心房さいき』による京料理。都をどりに合わせた献立には、筍をはじめ春の息吹に桜一枝が添えられるなど、目に舌に季節を愉しむ品々が。心尽くしの料理に皆、舌を唸らせた。       かな節回しにのって芸舞妓と打ち興じ、すっかり童心にかえる会員諸氏――古都の雅と粋にゆったりと触れ、心解き放たれる一日となった。京都の春を彩る催し、「都をどり」。京都五花街のなか芸舞妓の舞が披露されたのは、祇園甲部歌舞連場。唐イベント後半は、都をどり出演中の芸舞妓を『大ヌイ』そして締めくくりは、お待ちかねのお座敷遊び。軽や写真協力・祇園甲部歌舞連場2016都をどり鑑賞と祇園のお茶屋遊び京の春、花街の雅と粋にひたる右から:『大ヌイ』若女将・村上斗紫さん。「都をどりの初回はまず雰囲気を、2回目以降は三味線や浄瑠璃にも耳を傾け愉しまれては」。/男衆・庸介(のぶゆき)さんは、舞妓・まめ衣さんの帯をものの3分で締め上げた。/祇園甲部歌舞練場。/食べ頃を見計らい桜葉でマリネされた鯛など、『直心房 さいき』による京料理。上左:「金毘羅 ふ〜ねふ〜ね ♪」と唄いながら、手を出し合って競うお座敷遊び。慣れた手つきの舞妓・佳つ花さんに負かされるとワッと歓声が上がった。上右:季節に応じて替わる舞妓の髪飾り。都をどりの頃は桜。左:「総おどりでは舞妓も芸妓も『京島田』を結います。普段は鬘の芸妓も髪を伸ばして」と『大ヌイ』若女将。2016年4月23日開催76Event Report

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