SIGNATURE2016年08_09月号
38/73
あらひとがみアシIsla de Los Urosルー南東部、ボリビアとの国境にまたがるティティカカ湖は、富士山よりも高い標高3810メートルに位置する。琵琶湖の約12倍もの雪解け水を湛える、汽船が航行する世界一高いところにある湖だ。ここは、かつて栄華を誇ったインカ帝国の初代皇帝、マンコ・カパックが降り立った地という伝説が残されている。自らを現人神「太陽神の息子」として崇拝させた皇帝は、太陽信仰を国教とするインカ帝国を築き、ティティカカ湖を聖地の一つとして崇めてきた。今も湖は空よりも青く、黄金よりも煌めく神秘的な姿が訪れる者を魅了する。一方で、酸素が薄い過酷な環境に暮らす先住民族は、何千年にもわたり厳しい環境を生き抜く様々な知恵を生み出してきた。ティティカカ湖の観光の拠点となる町・プーノからボートを滑らせ、葦で囲まれた水路を進む。しばらくすると、大小さまざまな浮島が見えてくる。40以上あるといわれるそれらを総称して 「 ペウロ族の起源ははっきりとはしてい呼ぶ。青い空と湖の境に黄金色をした葦の浮島の上で、ピンクやブルーの鮮やかな衣装を着たウロ族の人々が暮らす姿は、いつかどこかで見た絵葉書そのままだ。ないが、16世紀にスペイン人が残した記録にすでに登場している。ティティカカ湖周辺にはアイマラ族やケチュア族、そしてウロ族など多くの先住民族(ウロス島)」と56湖上生活に欠かせない船もトトラでできている。船はバルサと呼ばれ、小さいものは漁に出る時に、大きいものはプーノの町へ物々交換に行く時や観光用に使う。舳先にはピューマやコンドルなどの守り神を飾る。
元のページ
../index.html#38