SIGNATURE2016年08_09月号
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今や「美食のアカデミー賞」として、すっかり定着した感のある、「世界ベストレストラン50」。その2016年度の授与式が、6月13日にニューヨークで開催された。2002年の創立から、ロンドンで開催されていた同アワードであるが、15回の節目となる今年から、ロンドン以外の都市を巡回することになった。その最初の都市に選ばれたのが、ニューヨークであった。会場のチプリアーニ・ウォールストリートには、世界中から700人を超えるシェフや投票者、ジャーナリストが詰めかけ、華やいだ雰囲気に包まれた。 世界が注目する第1位は、イタリアのモデナにある『オステリア・フランチェスカーナ』が選ばれた。受賞の瞬間、国旗を大きく掲げて壇上に向かうシェフのマッシモ・ボットゥーラに、多くのシェフたちが駆け寄って讃え合う姿が印象的であった。意外に思われるかもしれないが、同アワードでイタリアのレストランが1位になることは初である。待望の1位の受賞にマッシモは、「イタリアの料理人として祖国と仲間たちへの責任を果たした」と謝辞を述べた。 2位は、昨年1位と入れ替わるかたちでスペインの『エル・セジェ−ル・デ・カンロカ』が受賞。3位のニューヨークの『イレブン・マディソン・パーク』は、昨年の5位からのジャンプアップ。わが日本勢は、『NARISAWA』が昨年同様の8位。同時にアジアナンバーワンの称号も獲得した。強豪ひしめき合う世界の上位陣で、1桁台をキープするのは容易なことではないが、来年はさらに上位を狙ってほしい。『日本料理 龍吟』も31位と好位置を守った。10位以下が目まぐるしく入れ替わる中、大健闘といっていいだろう。 全体の総論としては、ランクインした50のレストランのうち47のシェフたちが会場に駆けつけたことは、同アワードの求心力と注目度の高さの表れだろう。50位以内には、世界中から23の国がランクイン。ランキング以外の各賞で個人的に注目したのが、ダイナースクラブがスポンサードする「ライフタイム・アチーブメント(特別功労賞)」にパリの老舗、『アルページュ』のアラン・パッサールが受賞したこと。同アワードとして、フランスの料理店に最大限にリスペクトしたかたちだ。そして、なんといっても会場を沸かせたのは、東京・神保町の『傳』(77位)が「ONE TO WATCH(注目のレストラン賞)」に選ばれたこと。来年のアワードでは、50位以内のランクインに大きな期待が寄せられる。 その来年の授与式の会場には、オーストラリアのメルボルンが選ばれた。南半球初の開催でどんなドラマが起こるのか。しばらく目が離せそうにない。REPORT右:念願の1位を獲得し、イタリア国旗を掲げて壇上に上がる、『オステリア・フランチェスカーナ』のマッシモ・ボットゥーラ。左:壇上で歓びをわかち合う受賞シェフたち。文・中村孝則(コラムニスト、「世界ベストレストラン50」日本評議委員長)右:メインスポンサーのひとつ、ダイナースクラブは「ライフタイム・アチーブメント(特別功労賞)」の冠にもなっている。中:『日本料理 龍吟』の山本征治シェフは、唯一の日本料理店として31位につけた。左:8位『NARISAWA』は、アジア圏のトップ。シェフの成澤由浩氏は、今回の23か国の受賞リストを振り返り、「地球に影なくスポットライトを当てるこのアワードの意義を再評価したい」と述べた。42’01世界ベストレストラン50 2016会場をニューヨークに移して開催!THE WORLD S 50 BEST RESTAURANTS 2016
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