SIGNATURE2016年04月号
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アメリカ西海岸にモントレー半島という大変に美しい土地がある。メキシコ湾から上昇して来る強靭で、ゆたかな恵みをもたらす海流が作り出した海岸線は世界でも指折の美眺を持つ。同時にその海は、クジラ、オットセイ、ラッコと言った生物の揺り籠のような海域でもある。この海岸に別荘地とゴルフコースが造られたのは一八九〇年代後半のことだ。半島に点在するいくつかのゴルフコースの中でも、その代表格がペブルビーチゴルフリンクスである。ゴルフ好きの読者なら、毎年、春先にこのゴルフコースで、プロゴルファーにアマチュアゴルファーを混じえたAPGAの大会が開催されているのをご存知の方もあろう。アマチュアが参加するからと言って、決して簡単なコースではない。むしろアメリカのゴルフコースでAPGAのプロがプレーしても難しいコースに入る。コースの難しさもあるが、名称にリンクスが付いているように海岸ぶちで海風に晒されたコースは自然との戦いがその難易度を高めている。霧も多いが、いったん天候が荒れはじめると、コースは豹変する。どのくらい変わるかと言えば、名物の7番ショートホールなどはグリーンまでの距離が100ヤードそこそこのしかも打ち下ろしで、アマチュアでもウェッジで届く。ところが天候が荒れ、海風が押し寄せると、全盛時のトム・ワトソンでさえ100ヤードを5番アイアンで海にむかってフルショットをしてようやくオンをする。スコットランドが発祥の地であるゴルフ。そのリンクスコースは〝ゴルフとは自然との戦いである〟の名言をまさに体験できる。 4Text by Shizuka IjuinIllustrations by Keisuke Nagatomo 帰帰ろろううかかククララブブをを海海にに投投げげ捨捨てててて
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