SIGNATURE2016年04月号
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イタリア半島を長靴にたとえると、かかとにあたる部分がプーリア州。肥沃な土壌、温暖な気候、南国の太陽に恵まれ、まさに豊かな大地という表現が相応しい大農業地帯だ。野菜の美味しさは群を抜いているし、豊かな味わいのオリーヴオイルも素晴らしい。ワインも古代から名声が高く、力強く豊潤な赤ワインで知られている。プーリアの中部の田園地帯に八角形の神秘的な城がポツリと立っている。神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世が13世紀に建築したカステル・デル・モンテだ。この城の周りに広がる石灰台地で造られるワインがカステル・デル・モンテである。ここで紹介するプーリアの名門リヴェラのイル・ファルコーネはこの地を代表する赤ワインだ。熟した赤い果実にタバコ、なめし革、スパイスが混ざる複雑な香りで、いかにも南イタリアらしい濃厚な果実味を持つが、同時にみずみずしくフレッシュで、どこか温かさを感じさせる味わいだ。ビロードのような口当たりが素晴らしく、厳格であると同時に包み込むようなやさしさがある。今回は東京・広尾の天現寺橋にある『ラ・ビスボッチャ』に出かけてみた。素材の味をストレートに生かした王道を行くイタリア料ふさわみやじまいさお|ワインジャーナリスト。京都生まれ。イタリアと日本でワインと食について執筆活動を行う。イタリアでは2006年から『ガンベロ・ロッソ・レストランガイド』の執筆スタッフを務める。新著『最後はなぜかうまくいくイタリア人』(日本経済新聞出版社)が好評。理でいつも満員の人気店だ。看板メニューの一つである「ラルドとトリュフペーストを詰めた松坂ポークのソテー」は、骨付きロースに、ラルドと香草、黒トリュフペーストを詰め、網脂で包んでオーブンでローストした豪快な一皿。テーブルでスライスされる黒トリュフが祝祭感を盛り上げる。まろやか肉質と口溶けのいい上品な脂の甘味が印象的で、イル・ファルコーネの勢いのある果実味とスパイシーなタンニンがそれを見事に引き立てる。素朴な味わい深さと高貴さが全く違和感なく溶け合っているところが、イタリアの食とワインの限りない魅力である。Isao Miyajima’s “Buona Italia!”Vol.16PugliaText by Isao MiyajimaPhotograph by Tadahiko NagataAbbinamentoイタリアの古い料理本にあったメニューを「ラ・ビスポッチャ」風にアレンジした香ばしくコクのある一皿。冬は黒トリュフ、夏場はサマートリュフ、秋口には白トリュフで年間を通して味わえる。固有品種ネーロ・ディ・トロイアにモンテプルチアーノをブレンド。小樽と大樽で14か月熟成。鷹(ファルコーネ)狩りをこよなく愛したフリードリヒ2世に捧げられたワインだ。 Ristoranteラ・ビスボッチャ東京都渋谷区恵比寿2-36-13 広尾SKビル1FTEL:03-3403-2916営業時間:17:30〜22:30(L.O.) 定休日:日曜www.labisboccia.tokyo第16回文・宮嶋 勲 写真・永田忠彦ラルドとトリュフペーストを詰めた松坂ポークのソテー“イル・ファルコーネ” カステル・デル・モンテ・ リゼルヴァ 2008デジタル版バックナンバーも併せてお楽しみください。※QRコードまたは 下記URLからのアクセスで 30日間ログイン不要でご覧いただけます。http://www.diners.co.jp/ja/sig/385/life withラルドとトリュフペーストを詰めた松坂ポークのソテー דイル・ファルコーネ”カステル・デル・モンテ・リゼルヴァ宮嶋勲の“おいしい”イタリアプーリア
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