SIGNATURE2016年04月号
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2展ぬかだのおおきみ18ColumnSignatureText by Mari Hashimotoはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)などがある。俵屋宗達以来、琳派の絵師たちが繰り返し描いてきた《風神雷神図》を、靫彦は中央アジアの風神アネモスの図像を参照し、少年のように潑剌と描いた。歴史の教科書にも採用された《飛鳥の春の額田王》は靫彦80歳の時の作。19歳の時に見た大和三山や飛鳥川など「国のまほろば」に対する初々しい感動を、60年の時を経て色鮮やかにまとめた。会期:2016年3月23日(水)〜5月15日(日)開館時間:10:00〜17:00 ※会期中、展示替えあり金曜は20:00まで(※入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜(ただし3/28、4/4、5/2は開館)会場:東京国立近代美術館(東京・北の丸公園)特設サイト http://yukihiko2016.jp/お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)重要文化財《智・感・情》1899年(明治32年)、カンヴァス、油彩、各180.6×99.8cm東京国立博物館蔵重要文化財《湖畔》1897年(明治30年)、カンヴァス、油彩、69.0×84.7cm、東京国立博物館蔵《飛鳥の春の 額田王》1964年 滋賀県立近代美術館蔵[4/19 〜5/15展示]《室内》1963年ポーラ美術館蔵[全会期展示]会期:2016年3月23日(水)〜5月15日(日)開館時間:9:30〜17:00金曜は20:00まで、土・日曜、祝日、5/2(月)は18:00まで※入館はいずれも閉館の30分前まで休館日:月曜(ただし3/28、4/4、5/2は開館)会場:東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)公式サイト http://www.seiki150.jp/お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)切手や教科書でもお馴染みの《湖畔》は、日本の伝統的な画題である「納涼図」を油彩画に改変したもの。青を基調とする淡い色調やあっさりとしたマチエールに、黒田の追究した「日本の洋画」の試みを見ることができる。一方、《智・感・情》は、西洋では長く追究されてきた理想的な人体表現を、日本人の肉体を題材に作り上げた。日本美術の冒険 第22回文・橋本麻里 日本の洋画第一世代である高橋由一が20歳になる頃まで葛飾北斎が生きていたように、江戸と明治の前半は地続きだった。その由一が亡くなる前年、9年にわたるフランス留学から帰国するのが、旧来のアカデミズムと新たに台頭した印象派の外光表現に学んだ黒田清輝である。 法律を学ぶために渡仏した清輝だが、方向転換してアカデミズムの画家ラファエル・コランに師事。さらに同時代のフランス絵画に刺激を受けつつ、サロンへの入選を果たした。どうすれば日本の美術が国際的な評価を受けるものになるのか。明るい光の中に日本的な画題や、理想化された日本人の身体を描く清輝の作品は、洋画壇に清新な風を吹き込むことになる。さらに東京美術学校で西洋画の教育に携わり、美術団体『白馬会』を結成。日本における西洋画の「アカデミズム」を築き上げる。今展では留学時代の《読書》《婦人像(厨房)》や帰国後の《舞妓》《智・感・情》など、近代を絵筆で切り拓いた、その画業の全貌を一望の下に見ることができる。 一方、清輝の同時代には、岡倉天心の理想に共鳴し、東京美術学校日本画科の教官を務め、新しい日本画を模索した菱田春草、下村観山らがいる。彼らの作品に感動して絵筆を握るようになったのが、日本画第二世代の安田靫彦だ。横山大観、春草らが朦朧体のような実験的な手法で、西洋画の筆法を採り入れようとしたのに対して、端正な線、端正な構図、澄んだ色彩を追究、古典へ傾斜していった靫彦は、明治末期から高度経済成長期まで、日本の近代とともに歩み、現代の私たちがイメージする「日本画」の、ひとつの規範・典型をつくり上げたのである。ゆきひこ特別展生誕150年 黒田清輝―日本近代絵画の巨匠ゆいちExhibition InformationExhibition InformationArt安田靫彦日本洋画の粋と日本画の古典美
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