SIGNATURE2016年04月号
12/87

春薫る鍋げん閑静な住宅街。西麻布からここ白金に越してきてちょうど2年が経つ。どこの駅からも近いわけではないのに、いつも賑わっているのはいい店の証拠だ。以前から一度行きたかったので、西麻布時代の常連さんに紹介してもらい、すっかりファンになった。女将の佐藤妹子さんは、とても優しくて楽しい。カウンターのお隣の一見さんらしきお客にも優しく話しかけている。佐藤さんをお目当てのお客も多いであろうと想像がつく。聞けば西麻布時代は料理も接客もすべて一人でこなしていたそうだが、白金では少しばかり席も増やし、寿司屋で働いていた職人との二人三脚だ。いちここは和食というよりも家庭料理といったほうがしっくりくる。それは西麻布時代からのコンセプトだろうし、身体ばかりか心までも癒されるような雰囲気があるからだろう。基本的にコースは2種類。家庭料理や刺身が数品続き、最後に鍋料理か寿司の選択となる。メニューは季節の食材を取り入れるため、ない(笑)。しかし心配は無用である。心と身体に優しい皿が次々と出される。どれもこれも上品で優しい味付けで、とてもていねいに作られていて、家庭料理の特上といった感じだ。外食が多い僕にとっては、不足がちの野菜が多めに取り入れられたバランスのいいさわら食事なので、いつもほっこりできる。最後はきまって鍋を頼む。この日は「鰆とハマグリ」。鰆を鍋で食べるとは珍しいが、ハマグリの出汁が切り身の中によく染み込んで美味しい。これからますます脂がのってくるので、とてもたのしみな一品である。ちなみに鍋はいつも旬の素材で作られる。先月は「ぶりしゃぶ」、その前は「あんこう鍋」だった。だからいつも鍋コースにするのだが、最後にお願いしてアラカルトで寿司を食べるのもいいものである。シャンパンやワインもあるが、鍋にはやっぱり日本酒が合う。女将の目利きで旬の酒がメニュー以外にも用意されているので、ぜひ味わってほしい。14NumberPhotographs by Masahiro Okamura(Crossover) Text by Tomoyasu ShitayaMaiko Sato住所:東京都港区白金6-3-14 Kukai Teraace白金1階電話:03-5475-6756営業時間:18:00〜25:00(L.O.コース23:00、アラカルト・ドリンク24:00)定休日:日曜さとう、『さとう、』の基本メニューは「お寿司のコース」(家庭料理4品、刺身、寿司6貫、お稲荷巻物、お新香、味噌汁付)5,500円と「お鍋のコース」(家庭料理4品、刺身、鍋、お新香、卵かけご飯、味噌汁付)5,000円。寿司は追加でオーダーも可能。鍋の内容は2週間に一度変わり、魚介系のほかに肉系の鍋もある。「鰆とハマグリの鍋」は4月上旬までで6,500円。*価格はすべて税抜です。女将108今月の一皿佐藤妹子

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る