SIGNATURE2016年04月号
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  上の目標はないですね。でもそれはすごく大きな目標でもあって。毎回『今日こそは!』と全力で挑んでも、『今回の演奏は最高だった!』という日は本当に稀。プロとして絶対的なハードルは超えるけど、それ以上に自分が行ったことのない場所へ到達することはまずない。だからこそ、いいライブができたときは最高に幸せを感じます」まだ見ぬ高みを目指し、開拓を続ける。その精神を称え、昨年秋にはスイスの時計ブランド、ジラール・ペルゴから「フランソワ・ペルゴアワード」が贈られている。授賞理由には、「慣例にとどまることなく、世界で活躍する旺盛なフロンティア・スピリット」とある。どれだけ評価を得ようとも、彼女はあえて困難な道を突き進む。自身それを、「山登りに似ている」と話す。 「いいライブができたときって、山頂に到着した瞬間と同じ。だけど登りきったと思ったら、もっと高い山があるのに気づいてしまう。見たこともない花や滝など、山に隠された〝宝物〟を探して、勇気を出して登ってみる。でも時々、頂上の世界が見たくて登ってるのかわからなくなって。もしかすると山頂ではなく、途中の〝宝探し〟が楽しくて登ってるのかもしれないなって思うんです」人6113うえはら ひろみ|1979年、静岡県浜松市生まれ。6歳よりピアノを始め、17歳でチック・コリアと共演。ボストンのバークリー音楽院在学中にジャズの名門テラークと契約し、2003年、アルバム『Another Mind』で世界デビュー。08年にはチック・コリアとのアルバム『Duet』、10年にソロ・ピアノ作品『Place to Be』をリリース。11年には「スタンリー・クラーク・トリオ feat.上原ひろみ」で第53回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム」を受賞するなど、世界を舞台に活躍。www.hiromiuehara.comSignatureInterviewHiromi UEHARAもっとピアノで表現したいという欲求……。だから、ほんとうの意味でのお休みは、時間に制約がなくピアノを弾くこと

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