SIGNATURE2016年04月号
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ャズピアニスト・上原ひろみの日々は、旅に始まり旅に終わる。一年の半分以上を海外で過ごす。ツアーで世界各地を駆け巡るも、観光など楽しんでいる余裕はない。異国情緒を味わえるのは、唯一車窓で望む景色から。移動の合間を縫って細切れに休息を取り、夜ごとステージに向かう。そのハードな毎日を乗り切るモチベーションは、一体どこにあるのだろう。 「ライブが好き。音楽が好き、ピアノが好きで好きでたまらない。それに尽きますね」当然、曲が生まれる瞬間も旅の途上だ。先頃発表したアルバム『SPARK』もそう。1年がかりで作曲し、ワールドツアーの合間にコネチカットで録音を行った。 「刺激的な人との出会いでも、会話でも、風景でも、何でもいい。心が何かすごい衝撃を受けたとき、衝動に駆られて作る。まさに〝スパーク〟です(笑)。いろいろなところで生まれた曲の断片を、パズルのようにひとつひとつ集めていった感じです」収録曲は、すべて上原自身によるオリジジ と        ナル。なかでも思い入れの深い曲は? ライブ本数実に年間100本以上、尋ねると、「全曲です」ときっぱり。音楽に対する並々ならぬ情熱が伝わってくる。ピアノを始めた6歳の頃から世界的アーティストとなった現在まで、その想いは一貫して揺らぐことはない。彼女にとって、ピアニストはまさに天職といえよう。 「どれだけ弾いても、もうやりたくないと思ったことは一度もありません。やればやるほど、もっともっとって思う。こういうことができたらもっと面白いだろうなとか、浮き彫りになるほど楽しさがわかる。やればやるほど面白くて、自然と職業になってた。最高の仕事だなって思います」とはいえ同世代の女性たちのように、おしゃれやショッピング、友達とのお喋りと、息抜きに費やす時間も時には必要だろう。たまのオフの過ごし方はというと………。 「思い切りピアノを弾きます! なくピアノが弾けるのはすごい喜びです。お腹が減ったら休憩して、ご飯を食べて、体力の続く限りまた弾いて。でもピアノは仕事でもあるから、オフとは言えないのかな? (笑)」と、あくまでもピアノは切り離せないよう。デビューから10年余り、世界中の都市で演奏を繰り返してきた。ライブの反応もさまざまで、お国柄が如実に表れる。 「ブエノスアイレスは南米らしく情熱的で、アンコール時に『ヒローミ、ヒローミ』ってサッカー場みたいに会場が沸いたり。でも盛り上がればいいかというとそうでもなくて、感情を表さなくても集中力があればいいライブだったりする。だから逆に、表現に惑わされない。たいてい顔を見れば、あ自由時間という感じでしょうか時間制限あ楽しんでくれてるなってわかります」自分へのご褒美は、ライブ後のディナー。食はその土地を感じる貴重な時間であり、ツアーにおける束の間の楽しみだという。 「最近食べたなかで印象に残ってるのは、イタリア・サルディニア島のパスタ。からすみのふりかけが大量にかかってて、おいしいけど痛風になりそうな感じ(笑)。でも一番好きなのはラーメン! メンブームで、世界中にお店があるので助かってます(笑)」人気者ゆえ、オファーが途切れることはない。今年に入ってからも、2月のヨーロッパ、3月のアメリカツアーと続く。この道程に、果たしてゴールはあるのだろうか。 「一本でもいいライブがしたい。これ以今海外は空前のラー12幕末の日本に、初めてのスイス時計正規代理店を開設したフランソワ・ペルゴの功績を讃え、『ジラール・ペルゴ』によって設立された「フランソワ・ペルゴ アワード」。2015年の受賞者である上原さんに贈られた、特別限定モデルの文字盤には、上原さんの楽譜の一節をあしらったモチーフが施されている。「キャッツアイ フランソワ・ペルゴアワード」ピンクゴールドケース/自動巻き2,950,000円(税込)/世界限定7本 www.sowind-japan.jp/news/gp/552/ 2016年2月にリリースされた通算10枚目のリーダー作「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス」の最新作『SPARK』。www.universal-music.co.jp

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